小さい声だったけど、がっ君には届いただろう。
ああ、言ってしまった…。
がっ君は、どんな反応をするかな…?
俯いていた顔を上げ、目の前の彼を見る。
わたしは、視界に映ったがっ君の顔に、言葉を失った。
その顔が、この世の終わりみたいな、表情をしていたから。
「…………………………は?」
長い長い沈黙の後、がっ君は震えた声で言った。
「桜…何を言ってるの?」
がっ君…?
目の前にいるのは、ほんとうにがっ君なの?
そう思わずにはいられないほど、がっ君は酷い顔をしていた。
な、なんで…?
驚かれるのは予想していたけど、そんな反応をされるだなんて思ってもみなかったのだ。
悲痛に歪んだ顔は、心なしか青くなっている。
「…あの男に何を言われた?」
「ち、違うよ…自分の意思で決めたの…」
「…………………へぇ」
こ、わい。
今日一番、強くそう思った。

