【完】君は狂った王子様。



「彼女が転びそうになったのを、僕が支えたところをたまたま撮ったんだろう」



「だから、気にしないで」と言って、微笑むがっ君。


…嘘だ。

だって、わたしは他にも、何枚も写真を見せてもらった。


その中に…キス、してるものも、あったんだよ…?


がっ君は…どうしてそんな、嘘をつくの?

わたしが、傷つくから?

婚約者…だから?



わたしのせいで、好きな子とも、堂々と付き合えないんでしょっ…?



優しいがっ君の嘘に、溢れ出しそうな涙を必死にこらえる。

やっぱり、わたしの存在はがっ君にとって、迷惑なものでしかない。



「がっ君、あの、ね…」



もう、がっ君の優しさに、わたしが耐えられなかった。



一ヶ月だなんて、長すぎたよね。

だってもう、何年もわたしのそばにいてくれたんだもん。

もう充分、わたしはがっ君にいっぱい甘えたよ。



「わ、わたしね…婚約、破棄…しようと思ってる…」



喉の奥から振り絞って、情けない声が出た。