【完】君は狂った王子様。



二人きりで部屋に残されて、変な息苦しさに思わず息を飲んだ。


恐る恐る、前に座るがっ君を伺うように見る。



「さぁ、いただこうか?」



わたしはコクリと頷いて、どれから手を付けていいかわからずひとまずお茶を飲んだ。

美味しい…落ち着く味。



「この水ようかん、桜好きだったよね?」

「うん…。桃が一番好き」



がっ君は、わたしに桃の水ようかんを差し出した。

パクリ、と、一口いただく。


甘い香りとようかんの滑らかな感触が広がって、思わず頰が溢れてしまいそう。



「美味しい?」



何度も頷く。

やっぱりこの水ようかん、大好き…っ。

パクパクと頬張るわたしをがっ君は笑顔で見つめている。



「喜んでくれて良かった」



わたしたちの間に、穏やかな空気が流れていた。



「ねぇ、桜」



ーーはずだった。