「何もないよ。ただの紙切れだった」
なら、どうしてポケットにしまうの…?
不思議に思ったけれど、別に聞くことでもないと思い気にすることをやめた。
「さ、鍵を閉めて戻ろうか」
教室から出てきたがっ君にそう言われ、頷いて鍵をしっかりとかける。
今度こそプールへ戻ろうと、歩いている途中。
「ねぇ、桜子」
「なぁに?」
「教室で、誰かと会った…?」
ーードキリ。心臓が、再びそんな音を立てた。
どうして。
わかった、の…?
なぜか全身に寒気のようなものがして、冷や汗が首筋を伝ったのがわかった。
恐る恐る、顔色を伺うようにがっ君を見る。
その顔は、いつもの笑顔。
それが、なぜかとても"怖い"と、思ってしまったんだ。
「…あ、会ってないよ…!」
「ほんとうに?」
「う、うん!わたししかいなかった…!」

