【完】君は狂った王子様。



ポーチを片手に、必死に走る。

今すぐがっ君に会いたくて、『桜』って呼んでもらいたくて…

廊下を、無我夢中で駆けた。



「きゃっ…」



廊下を曲がった時、誰かにぶつかり転びそうになる。

しかし、身体を抱きとめられ、想像していた衝撃は訪れなかった。

よ、よかった…。

ぶ、ぶつかった人に、謝らなきゃ…!


そう思い顔を上げれば、そこには、会いたくてたまらなかったがっ君の姿。

なぜか、焦った様子でわたしを見つめていた。



「桜子…!どこ行ってたんだ…!」



がっ君…!

会いたくてたまらなかった人の姿に、思わず泣きそうになる。



「出て行ったらダメって、言っただろう…!?もう…なにしていたの…」

「ごめんなさぃ…っ」

「…桜?」



情けない、声が出た。

がっ君は途端に表情を変え、探るような目でわたしを見る。



「何かあった?」



ドキリ。心臓が、そんな音を立てた。