「ヤキモチ…?」
ほんとうに、このババアは何を言っているのだろうか。
「そんな、かわいいものじゃない」
口から出た声は、自分でも驚くほどに低かった。
さすがの母親も怯んだのか、あからさまにビクリと身体を揺らす。
「と、とにかく、難波君は退学になんて出来ないわ。それと、彼に"変なこと"もしないように。いろいろ面倒なことになるんだから」
…ちっ。
めんどくさいことになった…。
桜の誕生日までは、大人しく、二人の時間を過ごしたかったのになぁ。
ーー俺が手を下すことは、時間を割くから避けたかったのに。
「…ババアに頼んだ俺が馬鹿だった」
「……」
「もう出て行って。"約束"を守れない人、俺嫌いなんだ」
お前にもう、用はないよ。
そんな気持ちを込めて言い捨てれば、母親は顔を真っ赤にして、悔しそうに歯を食いしばってみせる。

