ああ、腸が煮えくりそうだな。
母親は、おかしなものを見るような目を俺に向けてくる。
「母親にまで嫉妬?めんどくさい男ねー」
あー、うざったい。
そんな話をするために、桜を部屋から出て行かせたわけではない。
「…そんなことより、話があるんだけど」
俺はそう言って、ふぅ…と息を吐いた。
「こんな時期に転入生って、どういうことだよババア」
二学期が始まって少し経った、中途半端すぎる時期。
どう考えたっておかしいだろう。
編入試験は年に一度しか行われないはずだ。
なのに、特別に試験を設けてまであの男を入れたわけはなんだ?
怒鳴り散らしたい気持ちを抑えて、目の前のババアを睨みつけた。
俺に睨まれるのは慣れているからなのか、飄々とした態度で語る。
「機嫌悪くなったらババアって言うの、やめてくれない?…仕方ないのよ、彼はプロからスカウトも来てるバスケ選手よ?それに、姉妹校からの編入依頼なの…さっきも言ったけど退学になんて出来ないわ」
…退学に、出来ないだって?

