【完】君は狂った王子様。

【side牙玖】



ぱたり、と、控えめな音を立てて扉が閉まる。

桜が部屋から出て行って、俺は髪をかき上げた。



…ああ、イライラする。



「…あんまり桜にベタベタするな。悪い菌が移る」



目の前にいる母親は、俺の言葉に過剰に反応した。



「なによ悪い菌って!もう!!あたしはいつでも清潔ですー!」



…ガキかよ。

落ち着きのない女ほど、めんどくさいものはない。

腕を組み、フンッと鼻をならす母親。



「ほんっと猫かぶりもここまでくると詐欺よね。『母さん』だって?寒っ…!鳥肌が立つわ!」

「うるさい。とにかく触るな抱きつくな」



俺の桜に、ベタベタしすぎだ。


桜に触れるのは、女だろうと許せない。


桜が母親を気に入っているから、強くは言えないが、あのきめ細かい白い肌に触っていいのは俺だけだ。

俺だって、こんなにも我慢しているというのに。