「桜」
そう呼ばれて、慌てて声の主に視線を向けた。
「部屋、見ておいでよ」
その先には、笑顔のがっ君。
何故か笑っているのに、笑っていないように見えて、ビクッと身体が震えた。
わたしは名残惜しみながらもがっ君ママから離れる。
そ、そうだ、荷解き、しなきゃ…!
「う、うん…」
「もー、そんなの後で良いのに!また夕食の時にお話ししましょ」
「はい…!」
わたしは頷いてからがっ君ママに会釈をし、速足で部屋を出た。
ぱたり、と、ドアが閉まってから、先ほどの笑顔に見つけた違和感を思い出す。
…なんだかがっ君が不機嫌に思えたのは、わたしの気のせいだったのだろうか?

