がっ君ママはほんとうに優しくて良い人で、わたしなんかが婚約者でいることを歓迎してくれている。
だからこそ、がっ君もこの婚約が嫌だとは言えないのかな…?
わたしは心の動揺を悟られないように、にっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます…!」
がっ君ママも、綺麗な笑顔を返してくれる。
「……ねぇ母さん。そろそろ離してあげなよ」
…あっ、がっ君。
今まで黙っていたがっ君が、口を開いた。
がっ君ママは、少し不機嫌そうに、わたしから腕を離す。
「はいはい。…全く、男の嫉妬は醜いわぁ」
「母さん、変なこと言わないで」
「…??」
なにやらよくわからない親子の会話に、一人頭の上にはてなマークを浮かべる。
「桜、よかったら部屋を見てくるかい?荷物も届いているから、荷解きでもしておいで」
「あっ…うん!」
笑顔でそう言われて、わたしは首を縦にふる。

