「出張って…?」
『急に決まったことなのよ。桜子の荷物は全部送らせてもらったから、今日から京極さん家にお世話になりなさい』
「そ、そんな、朝はなにも…『ほんとに急に決まったの、ごめんなさい』
謝られると、それ以上何も言えない。
お仕事だから仕方ないよね…で、でも、わたしにも少しは選択権が欲しかった。
『桜子が一人じゃ心配だから、牙玖君が是非うちにって言ってくれたのよ。お母さんも、桜子を一人家に置いていくのは不安だもの』
チラリとがっ君に視線を向けると、お母さんの声が電話から漏れていたのか、ふっと笑みを溢された。
ほんとうに、いいのかな…?
わたし、迷惑じゃない?
そんな気持ちを込めてがっ君を見つめれば、いつものように頭を撫でられる。
それがまるで、いいんだと言われているようで…
「わかった…」
これ以上駄々をこねる訳にもいかず、口の端を曲げるだけに留まった。

