【完】君は狂った王子様。


それが気持ち良くって、瞳を閉じる。



「大丈夫、これからはずっと一緒にいるよ」

「…え?」



…今、何か言った?

空気に溶けるような小さな声だったので、聞き間違いかと思い瞼を持ち上げた。

視界に広がったのはいつもの優しい表情をしたがっ君で、聞き間違いかどうかなんてどうでもよくなる。


がっ君の綺麗な赤い瞳を見つめていると、がっ君は思い出したかのように口を開いた。



「そうだ桜、さっき、桜のお母さんから連絡があったんだ」



お母さんから、連絡?



「お父さんとお母さん、急に出張が決まったみたいで、一ヶ月家を開けるんだって」



一体なんだろうと思い次の言葉を待ったわたしに降ってきたのは、そんな言葉。

突然のことに一瞬理解できなくて、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。


出張?…一ヶ月?


そ、そんな、聞いてない…!