【完】君は狂った王子様。



昔は、毎日のように来ていたのに…。

なにも変わらない、がっ君のお家。


あと何度、わたしはこの扉に手をかけるのだろうか。

ふとそんなことを思って、胸が苦しくなった。


婚約破棄の件は、今は忘れよう。

今は、がっ君が心配だから、そんなこと考えてる場合じゃない。


頭の中の不安を全部リセットして、わたしは部屋の扉を開いた。


わたしの家のリビング程の広さがあるがっ君の部屋。

窓際にポツンと置かれたキングサイズのベッドに、がっ君は身体を起こしながら座っていた。


窓の外を見ていた視線が、わたしの元へと向けられる。

がっ君はふわりと笑って、わたしの訪問を迎い入れてくれた。



「桜、来てくれたんだね」



速足でがっ君の元へ駆け寄って、視線を合わせるように屈んだ。