ぶた、れるっ…。
綾小路さんが手を大きく振りかざし、次に何が起こるのか悟ったわたしは、衝撃に耐えるよう目を瞑った。
「何してるの?」
来るはずの痛みがやってくることはなく、代わりに、愛しい人の声が聞こえた。
目を開けると、綾小路さんの後ろに、ペットボトルを二本持って、わたしたちを見つめるがっ君の姿が。
綾小路さんは目を見開いて振り返り、振りかざした手を慌てて降ろした。
「京極君…!どうして、ここに…」
がっ君…?
綾小路さんの言葉に、がっ君は無言でにこっと笑って、こちらに近づいてくる。
「先生が差し入れで飲み物を配ってくれたから、桜の分も持ってきたんだ」
「はい、どうぞ」と言って、がっ君はわたしにペットボトルを1つ渡してくれた。
わたしの持っている白雪姫の衣装を見て、がっ君の眉が微かに動いた。

