【完】君は狂った王子様。



頰に手を重ねると、そこから熱が伝わってくる。

がっ君が、驚いたようにピクリと反応した。



「がっ君の、隣に立ちたく、て…」



瞳の奥から、なにかが溢れてきて…そのなにかが、涙だと気づく。

じわりと溢れた透明の液体が、わたしの視界を滲ませた。



「……は?」



涙のせいで、がっ君の表情がよく見えない。



「がっ君と、ダンスが、踊りたくて…。自分に自信を持ちたくて、参加したの…っ」

「桜子…」

「でも、やっぱりわたし、ダメだったね…結局、がっ君のこと怒らせちゃったっ…」



仰向けになっているから、溢れる涙が横に伝う。

耳に流れた涙が、ひんやりと冷たい。



大好き。

他の男の人なんて、関係ない。

ただ、がっ君だけに、可愛いって思ってもらいたかっただけ。

それだけは、わかってほしかった。