謝られる理由が無いので、わたしは抱きしめ返しながら、首を左右に振った。
がっ君は、なんにも悪くないよ…。
「わたしも怒らせてごめんね…」
抱きしめる腕に力を込めて、しがみつくように抱きついた。
やっぱり、がっ君の腕の中は、落ち着く…。
この匂いも、温もりも、全部が大好きだと心が叫んでいて、泣きたくなった。
「どうして桜が謝るんだ。俺が全部悪かった。俺のこと、嫌いになってないか…?」
「なるわけないよ…っ」
「ほんとうに?好き?」
そう訊かれて、わたしは思わずごくりと息を飲んだ。
…好きに、決まってるよ。
けれど、どうしてもその言葉を声に出すことを、身体が拒んだのだ。
こくり、と、ただ首を縦に振る。
がっ君は、困ったように笑って、わたしの頰にキスを落とした。
「……そっか。うん。俺は愛してるよ」