「ご、ごめんなさい京極君っ…ふらついちゃって…」
綾小路さんが、顔を真っ赤にしながらがっ君に謝っていた。
わたしは頭が混乱してしまって、その場から動けなくなる。
「………いや…僕の方こそごめんね。大丈夫だった?」
申し訳なさそうに、けれど至って平然ながっ君の姿に、胸が痛くなる。
女の子たちは興奮がやまないのかずっと黄色い声を上げていて、男の子は変な雄叫びをあげていた。
心臓が、ドクドクと変な音を立てて騒いでいる。
胸騒ぎ、というのだろうか、たまらずぎゅっと心臓のあたりを握りしめた。
「がっ君…」
わたしのその一言は、きっと騒いでいるクラスメイトたちには聞こえなかったはず。
なのに、彼だけがわたしの方へ振り返った。
バチリ、と、がっ君と目が合う。

