「待って桜」



今度は後ろから抱きしめられ、わたしの涙腺が切れてしまいそうになった。



「まだ、離れたくない。もう少し一緒に、ここにいよう」



耳元で囁かれて、首筋にキスを落とされる。


わたしだって…本当はずっと、一緒にいたいよっ…。



「今日は朝も、荷物運ぶのに忙しくて、キス出来なかったし…」



わたしだって、もっとずっと抱き合って、がっ君の近くにいたい…っ。

でもっ…



「ご、ごめんなさい…!することがあるから、帰るね…!」



自分の中の最大限の力を振り絞って、振り向きもせずがっ君から離れた。

逃げるように車を降りて、家の扉へと手を伸ばす。


最後に耳に入った…



「桜…?」



がっ君の心配そうな声を、聞こえないフリをして。