桜も少し驚いた様子で、それでも俺を抱きしめ返してくれる細い腕。
「好きだよ…がっ君…」
桜のその言葉だけで、俺の全身は歓喜に満たされてゆく。
「俺も…好きだよ」
桜の好きとは、比べものにならないくらいに、ね?
だって、桜は、知らないでしょう?
こんなにも、ドロドロとした悍ましい感情。
膨らみに膨らんで、原型がわからなくなるほどに歪な形になった愛情。
俺と同じくらい、醜くなって欲しいとは思わないけど…
…いつか、少しはわかってほしいな。
俺がどれだけ桜を愛してるか…どれだけ、桜に近づく者に、嫉妬を抱いているのか。
…なんて、桜が嫉妬してくれる日なんて、くる気がしないけどね…。
そんなことを思いながら、俺は小さな身体を抱きしめた。
【side牙玖】-END-