飛びつくように、すごい勢いで桜に抱きついたババア。
全身で喜びを露わにして、桜の頰に自分の頰を擦りつけた。
…くそ、ベタベタすんなって言ってるのに…
…でも、今日だけ…ほんとうに今日だけは、許してやるか…。
目に涙を滲ませている母親に、溜息を吐いた。
「あたし、あたしほんとに、二人のこと応援してたのよっ…?桜たんが牙玖と出逢ってくれて、ほんとうに、ほんとうによかったって、思っててねっ…」
「がっ君ママ…っ」
「何かあったら、いつでもあたしに相談していいのよっ…?どうしよう、嬉しくてまいあがっちゃいそう!パパに電話しなくっちゃ…!」
「今日の晩御飯は日本の風習に従ってお赤飯にしましょうね!」という訳のわからない言葉を残し、騒がしい物体は部屋から出て行った。
はぁ…やっと二人きりだ。
俺は呆気にとられ、ぽかんと口を開けている桜の手を、優しく握る。