とーるも手を振り返してくれて、わたしは視線をがっ君に戻す。
その横顔が、『怒り』を現しているようだった。
「がっ君…?どこに行くの?」
先ほどから、いったいどこへ向かっているのだろうか。
校舎に戻り、プールとは逆方向の廊下を進んでいくがっ君。
がっ君もわたしも、体育のジャージ姿だし、授業終了を告げるチャイムがそろそろなる頃。
戻って着替えて、次の授業に備えなきゃいけないのに…
「ねぇ桜子、さっきの男はなあに?」
わたしの質問への回答とは、全く違うものが返ってくる。
しかも、がっ君は前を向いたまま、わたしの顔すら見ない。
「……」
「桜子?僕の質問が聞こえた?」
いつもの優しいがっ君はどこへ行ってしまったんだろう。
なんだかがっ君が、別人みたいで、黙り込んでいると、答を急かされた。
「とーるは…友達、だよ?」
これ以上機嫌を損ねたくはないと思い、そう零した。

