「しきたりがあったから…がっ君は今まで…」
何も、言ってくれなかったの?
「そうだよ。毎日桜に好きだって言いたくて堪らなくて…俺の恋人になってくださいって言葉を、何度も何度も飲み込んだ」
がっ君は、それを思い出すように、フッと笑った。
「だから…もういい?」
「…え?」
「もう、言ってもいい?」
何を…?なんて、言わない。
がっ君のその瞳で、がっ君が言おうとしている言葉がわかったから。
わたしはただ、一度だけ頷く。
「桜子…僕と、付き合ってください」
…っ。
心臓が、飛び跳ねる。
全身が嬉しいと叫んでいて、それを表すのは、一筋の涙。

