【完】君は狂った王子様。




もう片方の手で、がっ君の頰に優しく触れて、薄っすらと浮かぶ涙を拭う。


静寂が流れる室内。

わたしたちは静かに見つめ合っていて、まるでわたしたちの周りだけが、時の刻みを止めているようだった。


すうっ…と息を吸って、微笑みを浮かべる。




「ずっと前から好きだったのっ…でも、がっ君は優しいから、わたしがそばにいたら迷惑かなって…それ、で…」



耐えきれずに溢れる涙は、嬉し涙だから気にしないでね…?



「っ、好き…」



わたしは両手でがっ君の頰を包み込んで、もう一度笑顔を向けた。



「わたしも好きだから…そんな悲しそうな顔しないでっ…」



ーーいつもの、優しい笑顔を見せて?



目を見開いて、がっ君は少しも動かずにわたしを見つめる。