婚約者、兼幼なじみ。
いや、違うかな。
幼なじみ兼、婚約者。
わたしたちは、きっとそんな関係なはず。
朝、仕度を済ませ家を出ると、門の前には真っ白な高級車が停められている。
その中から出てくる、一人の男性。
その車にお似合いの、美しい彼。
「おはよう、桜」
そう言って、にこりと笑ってみせる。
その笑顔も、朝日に負けぬ美しさを放っていた。
「おはよう…がっ君」
この清々しい朝には似合わない、わたしの暗く重い声。
「さあ、行こうか」
「…ありが、とう」
彼は車の扉を開けて、エスコートするようにわたしを車内に導いた。
もちろん、わたしはそんなことは望んでいないし、出来ればここから逃げ出したい。
しかし、そんなことをするのも無意味だとわかっているので、おとなしく乗車したのだ。