【完】君は狂った王子様。



「僕から逃げるなんて…許さないから…」



ギジリ、と、ベッドが軋む音が響く。



「ねぇ…桜子」



重低音の声。

わたしの両手首を掴む手には力が入っていて、とても痛い。

けれど、わたしなんかよりもずっと、がっ君は苦しそうな表情をしていた。



「そんなに…僕が嫌い…?」



途切れ途切れに、紡がれた声。

掴む手も、肩も、その声も…小刻みに震えていた。


怒りではなく、哀しみで。

思わず、眉を寄せ、下唇を噛み締めた。


がっ君は何か考えるように黙り込んだ後、掠れた笑いを零す。



「はっ…当たり前だよね。こんなことされちゃってるんだからね。監禁なんかする頭の狂った男を、嫌いになるなって方が無理だね?」



まるで何かを諦めたような言い方をして、さらに掴む手に力を込めた。