足音一つしなかったはずなのに、今わたしの背後にいるのはがっ君だと理解し、さーっと血の気が引く。
がっ君は、ドアに付いた両手をわたしのお腹に回して、強く強く抱きしめてきた。
「約束破るなんて、酷いな…」
今にも耳に触れそうな距離で言われ、吐息がかかりくすぐったい。
がっ君はそのまま、わたしの耳を甘噛みして、首筋に顔を埋めてきた。
急な出来事に、何が何だかわからなくなる。
耳、かまっ、れたっ…!
どうしよう…こっそり出て行くはずだったのに…まさか起きてたなんて…っ。
「がっ君、これは…「言い訳なんて聞かないよ。桜にはお仕置きが必要みたいだね」
何か言い訳を述べようとしたわたしの言葉を遮って、首を少し痛いくらいに噛まれた。
…っ、痛っ…。
がっ君は、そのままわたしをヒョイっと横抱きにして持ち上げ、部屋の奥へと歩いていく。