ゆっくりと立ち上がって、部屋を出る。


別にもう会えなくなるわけじゃないのに、学校に行けばいつでも会えるのに、悲しくて寂しくて切なくて、涙が溢れてきた。


早く帰ろう。

早く、ここから出なきゃ。


迷わず、玄関に向かって一直線に歩く。


…っ。

ドアノブに手を添えた時、耐えきれずにポタポタと、涙が幾つも溢れた。

この扉から出ることを、躊躇してしまっている自分がいる。


がっ君のためを想うなら、やっぱりわたしは、いない方がいいーー…


そう決意して、ドアノブを提げた。



ーーードンッ。



「…っ、え?」



驚いて、声が漏れる。

背後から、ドアに手をつく腕が伸びて来て、一瞬何が起きたかわからなかった。


だって、気配も何も、感じなかったんだものっ…。



「逃げないって言ったのに…桜はほんとに、悪い子だね」



わたしの耳元で、がっ君は低い声で囁いた。