【完】君は狂った王子様。


ひょいっと出てきて、わたしの隣に現れた。


突如現れた男の子の姿に、驚いて固まってしまう。

い、いつからいたの…?

ずっとって…人の気配なんてしなかったのに。



「なぁ、名前なんて言うん?」



わたしと同じ制服を身に纏っているから、この学園の生徒であることは確かだろう。

人懐っこい笑顔でそう聞いてくる彼に、恐る恐る唇を開く。



「白咲(しらさき)…桜子(さくらこ)」



男の人はとても苦手だから、できれば今すぐ逃げてしまいたい。

でも、なんだか彼の笑顔から逃げてはいけない気がして、自分の名前を零した。



「うっわ、名前ぴったりやん!」

「……」

「オレ、今日からここの1年になった難波 徹(なんば とおる)。転校初日に迷子になってもうて、うろちょろしとったらここの花畑見つけてん」

「……」

「ようさん咲いてんなー思っとったら、急に見たこともないべっぴんさん現れて。思わず見惚れとったわ」



よ、ようさん…?べっぴんさん…?