【完】君は狂った王子様。

わたしを見つめる優しい瞳が、

わたしの名前を呼ぶ優しい声が、

わたしの頭を撫でる優しい手が…大好きだった。


なぁんて…"だった"…じゃないかぁ…。



「がっ君…好き、だよ…」



結局のところ、わたしはなにがあってもなにをされても、がっ君を嫌いになんてなれないんだろう。

絶対に伝えられない言葉を、眠っているのをいいことに、零してしまった。


先ほどまで閉まっていたはずのがっ君の瞳が、ゆっくりと開かれる。



ーーーっ、え?



がっ君はまるで起きていたかのように、驚いた表情を浮かべた。


バチッと、確実に目が合った。

頭の中が、真っ白になる。


がっ君…一体、いつから、起きて…



「さくら、こ…?」



薄い唇が開かれて、わたしの名前を呼んだ。



「今…なんて言った…っ?」



これでもかと見開かれたがっ君の瞳に、映っている自分を見つけた。