【完】君は狂った王子様。

そんなこと、洋花嫌いのお母さんには口が裂けても言えないけれど。



ーーガサッ


背後から、そんな物音がした。


慌てて振り向けば、フリージアの花が揺れているだけで、誰もいない。


驚いた…誰かいるのかと思った。

ほっと、胸を撫で下ろす。


しかし、その物音は気のせいではなかったらしい。



「うわ、隠れとったのに、ばれてもうた」



確かに聞こえた、男性の声。

しかも、聞いたことのない方言。…確か、関西弁?というのだろうか?


とにかく、近くで聞こえたのだ。

わたしはきょろきょろと辺りを見渡し、声の主を捜す。



「おー、こっちこっち。こっちやで女の子」



女の子、とは、わたしのことだろうか?



「よっこいしょ!」


「…っ!」

「そない驚かんでも。ずっとここおったで?」



なんと、声の主は薔薇園の隅に隠れていたらしい。