握られた手の感触、体温、伝わる全てのものに幸福感を感じる。
今まで生きてきて、こんなことはなかった。
俺はずっと退屈な世界の中を彷徨っていて、逃れたくても逃れられなくて、足掻いていたんだ。
まるで底のない海に溺れ続けるような、息ができなくて窒息してしまいそうな、そんな世界だった。
なのに、彼女は俺を、あっという間に救いあげてくれたんだ。
「牙玖…!よかったっ…!」
今にも泣きそう顔の母親が、俺を抱きしめてくる。
きっと俺が勝手に消えたから、また良からぬことでもしかねないと心配したんだろう。
大丈夫。もう死んでみようなんて考えないから。
だって、俺は桜子を見つけたんだ。

