【完】君は狂った王子様。



次になにを言われるんだろう。

恐ろしくて、俺は彼女に見られないように瞳を閉じる。空いた手でズボンを強く、シワが付くほど握りしめた。


薔薇園に流れるのは、強い香りと、静寂。




「きれい…」




固く閉じていた瞼が、ゆっくりと開いて行く。

……今、彼女は何と言った?

ーーー何て、言ったんだ?



俺の聞き間違いだろうか。いや、そうに決まっている。

だって、そんな言葉が彼女の口から、溢れるわけが無いじゃないか。



「…っ、は?」

「とってもきれい…この薔薇の色みたい」



バ、ラ…?

俺の目が?


きれい、だって?


言葉もなにも出てこなくて、ただ彼女の瞳と視線を交わす。

彼女は、口角を控えめに上げて、大きな目を垂れさせながら微笑んでいた。