【完】君は狂った王子様。



少しでも美しいなどと頭のおかしなことを思ってしまった自分を、殴りたくなった。



「…ぃたっ」



薔薇園に、小鳥のさえずりのような、愛らしい声が響いた。



ーーーードクリ



身体の奥が、そんな音をたてる。

全身が、震えた。


彼女は薔薇で指を切ったしまったのだろうか、薬指を痛そうに抑えている。

俺はとっさに彼女の元へ駆け寄った。隠れていることも、忘れて。


「…えっ…?」


突然俺が現れたからか、彼女は困惑した様子で俺を見た。

目線を合わせるように、しゃがみ込む。


近くで見ると、少女はますます美しくて、くらりと眩暈がした。


メドゥーズのような淡い春色の髪に、俺を見つめる瞳の色は、優しい空色。

その瞳いっぱいに俺が映っている。それだけなのに、それだけで、心が満たされていくのは何故だろう。


俺はやましい気持ちをぐっと飲み込んで、優しく話しかけた。



「薔薇で手を切ったの?大丈夫?見せて」