お風呂に浸かったままのわたしを抱きしめるから、がっ君の服が濡れている。


けれどがっ君はもうそんなことは気にしていない様子で、ただ必死に、わたしを抱きしめてきた。

がっ君…?


驚いて、されるがまま、固まるわたし。



「よかったっ…」



喉の奥から、必死に振り絞ったような声が、浴室に響く。



「お前が、出て行ったと思って…っ」



わたしを抱きしめる手が、とても震えていることに気づいた。



「頭が、真っ白になった…」と、今にも消えそうな声で、がっ君は言った。



何故か、無性に泣きたくなる。

だってがっ君…わたしが必要だって、そんな声で、言うんだもん。


わたしがいなくなることが、とてつもなく恐ろしいみたいに、いつも堂々としてるがっ君が、子供みたいに身体を震わせているから。


どうしたの、がっ君?

どうして、そんなに震えているの…?

どうして、そんな、大事そうに、抱きしめてくるのっ…?


あなたのことを、どうしてわかってあげられないんだろう。

がっ君の考えていることが、今すぐわかればいいのに…


今わかるのは、ただ一つだけ。




ーーこの人が好きだと、わたしの心が叫んでいる。