だって、がっ君がこんなことをする意味も、理由も、わからないんだものっ…。



どうしちゃったの…がっ君…っ。


恐怖…いや、違う。

わたしは、怖いんじゃない。


…悲しい、んだ。



「お待たせ桜…っ、どうしたんだ!?」



部屋に戻ってきたがっ君が、わたしの姿を見て駆け寄ってくる。

慌てた表情で、心配したように顔を覗き込んできた。



「どうして…泣いているの…っ」



頰に伝う、一筋の雫。

涙と呼ばれるそれは、ベッドのシーツにシミを作っていく。



「桜…どこか痛むの「さわらないでっ!」



わたしの頭にそっと置かれたがっ君の手を、振り払った。


がっ君の手を拒んだのは、初めてだった。


目の前にある顔が、悲痛に歪む。



「桜…」



泣きそうな声で名前を言われて、胸が痛んだ。

がっ君が、とても悲しそうな表情をする。



「…ごめんね。ご飯ここに置いて置くから、ちゃんと食べるんだよ?何かあったらすぐに呼んで」



ベッドの隣にあるテーブルに持ってきたトレーを置いて、がっ君は無理に作った笑顔を残し、部屋から出て行った。