「なぁ、池谷。
洗いざらい吐いてくれておおきに」







「………は?」



理解できないと言った様子で、半笑いを浮かべながら首をかしげる池谷。


「っ……!」


しかし詐欺師の男は裏切られたことを理解したらしく、慌てふためいて出入口に向かって走り出した。

しかし。



「動くな、お前らの負けだ」



ひとつしかない出入口の先にいたのは、眼光鋭く睨みつける屈強な男たち。

どうやら望月が西雲会の組員を集めていたようだ。



「……Putain de Merde!」



詐欺師の男はフランス語で喚くと、すぐ組員に拘束された。

池谷と最後まで意地汚く逃げようとしていたがあっけなく捕まっていた。

怒号と悲鳴と命乞い──望月は特に何も指示することなくその様子を無表情でただ眺めていた。



「大丈夫ですか?」



状況が一転し、呆然とその様子を見ているとひとりの男が近づいてきた。

能面のように無表情でヤクザらしくない静かな瞳。

こめかみの部分に傷跡の残る男──知っている。

こいつは以前、荒瀬志勇を撃った望月の側近、赤星だ。



「とりあえず縄を解きましょう。
傷跡の処置はその後行いますので」



彼は持っていたナイフで縄を切ると、疲労のせいかバランスを崩して倒れそうになった私の身体を抱き止めた。



「もう大丈夫です。大希はあなたの味方ですから」



ようやく自分は助かったんだと感じて、いつの間にか震えていた手を握りしめた。