「……あの、」
「………」
「もしもーし。……まさか死んで、」
「ねーよ」
安眠妨害すんな、みたいな目をするより、まずは自分が近所迷惑起こしてること自覚した方がよいのでは。
「今夜もベンチで夜明かしですか?」
「そのつもり」
「毎回朝になったら消えてますよね。妖怪か何かですか?それとも私からご飯を恵んでもらおうとか思ってます?」
「思ってる」
「やめてもらえますか、それ」
薄々思ってはいたけど、まさかその通りだったとは……。
「雨降ってる中寝るのはやめた方がいいと思います。風邪ひきますよ」
「風邪はひきたくないけど、傘持ってないし」
傘ぐらい持とうよ……と思いながら、雨粒を凌げるようにビニール傘を傾ける。
すっごい憂鬱だけど。言いたくないけど。
こんなこと、したくもないけど。
さっきの言葉は覆せない。
「とりあえず、風邪引かれたら面倒くさいので私の家行きましょうか」



