「もう行くけど、行く前に哀榎ちゃんに会っておきたいなと思って。来ちゃった」
いたずらっこのような笑顔で言われたら私が何か言えると思っているのだろうか、目の前の男は。
「...何それ。お昼になったらまたすぐに会えるでしょ」
どんな顔で言ったらいいかわからなくて、目線を合わさないまま言ってしまった。
「そうだけどね。でも哀榎ちゃん、ゴールテープもやるでしょ?」
「えぇ。やる予定だけど....」
合わなかった目線は蒼空から顔をグイっと持ち上げられたことで、正面から交わった。
今も昔も変わっていないまっすぐできれいな瞳。
ずっと見つめていると吸い込まれしまいそうな深さ、怖さもあるような。
「僕絶対に1位になってゴールテープ切るから。必ず哀榎ちゃんのところ1番に行くからちゃんと待っててね」
「........わかった。待ってるから」
彼の瞳があまりにも真剣で目をそらすことはできなかった。



