「私の意思でやったわけじゃないから、お礼はいらない。お礼を言われる程のことじゃないし」
あの日の私は、別に野木さんを助けたいなんて崇高な動機で代わったわけじゃない。
私自身、そんな善人ではないし。
「でも、助けてくれたから.....」
「勘違いしないで。私はあなたを助けたわけじゃない。弱いものいじめして威張ってる人達が嫌いなだけ」
ただ自分の自己満足のため、そのために野木さんを利用したにすぎない。
正義のヒーローのような人助けは私には出来ない。
あの時は空気感も雰囲気も全てが嫌だった。
昔の自分に飲み込まれそうになって、嫌なことばかり思い出して。
同じ立場にいるくせに、優劣をつけようとする馬鹿な人達も、劣っている立場だと思い込んでる奴も。
そんなもの学生の間にはないから。



