立ち止まっていた足を動かして、水飲み場に向かうと、既に1人だけ先着がいた。
私は話しかけることなく、とりあえず手を洗いに行く。
すると当然気付かれるわけで.....。
「.....あ、あの.....」
今にも消えそうなか細い声。
同級生の私に何をそんなにビビる必要があるのかと思うくらい。
「....何?」
だけど、彼女にとってはそれが精一杯であることも私には分かる。
この人、野木さんと私が話したことはあの種目決めの時が初めてだから。
「あの....この間はありがとう」
いつも前髪で目は隠されていて、今だってお礼を言ってくれてるけど目は合わない。
髪で目を隠すこと、それが彼女なりの自分の防御。
せめて自分の中にだけは誰も入ってこないようにと作った小さな壁。



