「どういたしまして。別にお礼を言われるほどじゃないけど」
お礼を言われるほど大層なことはしていない。
今のはアドバイスじゃなくて、ただ意見を口に出しただけ。
「それじゃあ私はもう帰るから。またね」
買う気もないのにあまり長居するのはお店にも失礼だからね。
「あ、あと1つだけ言っておくわ」
「.......?」
「あなたが思うほど、周りは敵だらけじゃない」
それだけ言って、彼女に背を向けて歩き始めた。
私が言った言葉はあの時に、誰かに言ってほしかった言葉。
周りが世界が全て敵だと思っていた、全てを憎み孤立していたあの時代に。
視野の狭くなっている時には気づけないけれど、自分が思うほど周りは敵だらけじゃない。
世の中には敵だと思えるほど酷い人もいれば、知らない人にすら手を差し伸べるほど優しい人もいるのだから。



