その日は新しいベッドで、なかなか寝付けなかった。

これからみんなとの共同生活がうまくいくだろうか?

そんな不安が頭をめぐる。

だけど同時に、大きな期待もあった。

ピアニストじゃない自分をここで見つけられたら、それが私の新しい居場所になったら……そんな感じの期待。

壁一枚隔てた向こうには、ルナがいる。

耳を澄ますと、ルナは部屋でブツブツと何かを言っていた。

何をしゃべっているかまでは聞き取れなかった。多分、耳がいい私じゃなければ、しゃべっていることにも気づかないだろう。

……その言葉の意味を、後になって私は知ることになる。

それは最強の男であるルナが抱える、深淵を覗くような、過去の闇だった。