突然のことに、状況を理解できなかった。

ルナの手がほほに軽く触れる。反対の手が、私のアゴへ。

「あっ…」と、声がこぼれる。上を向けられる。ルナは長い睫毛の、眼を閉じる。

唇が近づく。思わず私も目を閉じる。濡れた感触がする。そこから、温かい温度が、顔中に広がる。

「んあっ…」

唇を離したとき、ようやく自分がルナにキスをされたんだと自覚した。

幹部達のほんとんどがそれを見ていた。

「こいつは今日から、俺達が誘拐する」

みんな声が出ない。私も。ただ顔が熱くて、心臓がうるさかった。

初めてされた。蓮ともしたことがない。

こんなの、ルナの方こそずるい。

これでドキドキしない女子なんて、いるわけないよ。

「琴葉は俺の女として、ここに住まわせる。異論は認めない。もし逆らう奴がいるなら、俺が許さない…」

ルナは「以上だ」と、どこかへ消えた。

将冴さんは爆笑する。颯さんは顔が真っ赤だ。

慧さんは難しい顔をして、篤史さんは「俺は認めない」と呟いた。

麗於さんは私を見つめて微笑んだ。

その笑みは、何かを企むような含みがあった。

唇を指でなぞる。今日から、私の全てが変わっていく。

そんな予感がする。