辺りはシーンと静まり返った。

無性に悲しくなって、涙が出た。ほほを伝い、散らばった髪のうえに落ちる。

黙って見ていたルナは、私のもとに歩み寄る。相変わらず表情は険しくて、冷酷な目つき。

その手がほほに近づく。

ぶたれる! お兄ちゃんを思い出し、思わず目をつむる。するとルナの手は、短くなった私の髪に触れた。

「痛かったよな…」

ルナの目は、今まで見たことないくらい優しかった。それに手のひらが、温かい。

涙があふれてくる。自分でもどうしようもなくて、顔をくしゃくしゃにしながら、こらえた。

「おいルナ、まさか気が変わったなんて言わないよな?」

篤史さんが不快そうに言う。

「守るものができれば、自由を楽しめなくなる。そう言ったのはお前だろ? いずれそいつは、AXISの弱点になるぜ…」