「なんだ?」と振り返る。

「今夜だけでいい。せめて今夜だけでも、琴葉に“自由”を見せてやりたい!」

将冴さんは私の手を強く握る。

「お前のバイクに乗せるのか?」

「何かあれば責任は俺が取る」

ルナは少し考えたあと、口を開く。

「はぁ、しょうがない。そこまで言うなら認めてやる。だが、琴葉に怪我だけはさせるなよ」

ルナはそう言い残し、倉庫を出た。

「運が良かったな。総長が折れるなんて奇跡だぞ」と慧。

「行きましょう。皆が待ってます」

麗於さんが言う。

今でも心臓がバクバクする。

今夜だけは、AXISのみんなといられる。

そう思うだけで、胸の奥が温かくなる。

これはきっと、良い記憶になる。そして、この記憶はどんな旋律を奏でるのだろう?

とっさにそう思った自分が、まだピアノへの未練があるようで、嫌いになった。