蓮はさらに強く、腕を握る。

「死んだお母さんとの“約束”はどうなるんだ? “ワルシャワの舞台”に立って、世界一のピアニストになるのが君の夢だろ」

蓮の緑色の目が、私を飲み込もうとする。思わず顔を背けると、蓮はアゴに触れ、顔をむけさせる。

「離してっ!!」

私は蓮の腕を振り払い、逃れる。

「お母さんとの約束なんて関係ない! もう二度とピアノは弾かないって決めたから!」

「琴葉…」

私は蓮を置いて走った。蓮は最後に「必ず取り戻すから…」と、呟いた気がした。