「世間は君の表面的な部分ばかりを見て、本質的なものを理解しようとしないんだ。というより、理解できないんだろうね」

蓮はあきれたように言う。

子供のときから、カメラの前に立たされるのが嫌いだった。何か心の中に他人が土足で押し入り、自分を壊されてしまう気がしたからだ。

「僕は思うよ。僕が生まれてきた理由は、ただ君を理解するためだけだって。僕なら君が見ている世界を、なんとか理解することができる。僕らは同じ、特別な才能をもって生まれてきたんだからね…」

胸がざわざわとした。なんだろう? この落ち着かない感じは?

「何度も言うけど、私には共感覚があるだけ。私の才能なんて、その程度だから…」

「そうかな? 本当はもう、ずっと前から気づいてるんだろ?」

蓮はテーブルにあった私の手に触れた。

気づいてる…?

「君は特別な存在だ。いつか君は……世界を変えることになる」

私が特別…?

「違う。私は…」
「琴葉。僕の目を見ろよ」

いつになく低い声で、蓮は私の手を握る。視線はかち合い、蓮の緑色の目が輝く。

「君を愛してる…」