タクシーの窓から、ぼんやりと外を眺める。

暖房が壊れているのか、車内は肌寒く、無意識に太ももが震える。

「はぁ…」

ため息が出た。窓が白く曇る。

……結局、私だけじゃないか。

止まることもなく、濁流のように過ぎていく時間の中で、人は変わり続けることで、前へ進む。

古い自分を脱ぎ捨て、時には誰かとの繋がりを手放し、新しい変化と環境を求める。

そうして変わり続けることで、私達は過去の痛みを乗り越え、残酷な今を受け入れ、未来に希望を抱くことができる。

逆に変わり続けない者に待つのは、真っ赤な林檎が腐っていく過程のような死だ。

……そう。みんなは変わり続けていた。

ルナがAXISを辞め、警察官の道を選んだように、みんなもみんなの人生を生き、私の知らない誰かとなって、輝いていた。

だからみんながルナの死によって足を止めることもなかった。

それはみんなが、ルナを大切に想っていなかったからじゃない。

みんなはもう、すでにルナのいない人生を歩んでいたからだ。

新しい繋がりを持ち、新しい環境で生き、過去を振り返らず、未来に向かって一歩を踏み出し続けた。

だからルナの死が、みんなの歩みを止めることにはならなかった。悲しむことはあっても、色々な後悔が頭を過っても、みんなの目は、ずっと未来を見ている。

なのに、私はどうだろう?