いつも余裕たっぷりの麗於さんは、いつになく真剣な顔をしていた。

私は静かにうなずく。麗於さんは口を開く。

「懐かしさに浸り、記憶の音に溺れてはいけません。時の流れる先、未来にある光だけを見つめなさい。これからあなたは、あなたにしか歩めない未来を進むのです。決して振り返ってはなりません」

それは別れの寂しさに浸る、私を叱るような厳しい言葉に思えた。

けど同時に、麗於さんの父親のような深い愛情があふれていた。

「約束できますか?」

「麗於さんが言うなら…」と私。

思えば、麗於さんはいつか私とルナが別れなければならないことを、ずっと前から、もしかしたら出会ったときから、気づいていたのかもしれない。

魔法使いや、予言者のような人だ。でもそれ以上に、温かい。

「そろそろ行くよ」と蓮が呼びに来た。