その夜、私は初めての経験をした。

ルナの愛を一身に受け止めたその時間は、私にとって、かけがえのない記憶となった。

ベッドで横になり、向かい合うと、私達は手を繋いだ。

「もし、四年後、私が世界一のピアニストになれたら、その時は私を迎えに来てくれる?」

私の問いかけに、ルナは少し考えたあと、静かにうなずいた。

「約束する。俺もそれまでに、俺自身を誇りに思えるような生き方をする」

朝、日が差し込み、目を覚ました。

ベッドには私一人しかいなかった。

ルナは私が目覚める前に姿を消した。

止まっていた時計の針を動かすように、これから、私達の挑戦が始まる。

私は世界一のピアニストになるために。

ルナは、お巡りさんになって、 子供達を守るために。

四年後の再会を約束して、私達は別れを選んだ。

正直、今は耐えられないくらい辛い。

だけど、必ずまた会えるから。

それまでは、せめて私も……